戯言繰言空言
紅炎のソレンティアのプレイ日記です。多分。 SNGのお知り合いはリンクアンリンクフリーです。
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こちらにかくのを忘れていましたすみません;
こっそりと投下ー!
急いで書いた為文章がいつも以上に稚拙ですorz
* * * * * * * * * *
門をくぐって見えた懐かしい故郷の景色に、キャンティは思わず目を細めた。
なだらかな山間に広がる田園風景。レフェスのやや西側の山岳地方にある小さな村が、キャンティの故郷だった。
豊かな土地に支えられて村人は皆この時間には畑仕事に精を出している。
すぅ、と故郷の空気を吸い込んだキャンティがニッコリ歩き出そうとしたその時、
「キティー!!」
ガバッと後ろから飛びついてきたのは、抜群のプロポーションを持った三毛猫風のレフェシアンの女性だった。
あらゆる点で一回り小さいキャンティを後ろからしっかり抱きついて、癖っ毛の頭にほおずりをしている。
「ただいま、お姉ちゃん」
「お帰り、キティ」
もぞもぞ振り返ってニッコリ微笑みかけたキャンティに、姉のシュンセツはニコッと無邪気に微笑んで答えたその時。
どーんっと器用に彼女だけを突き飛ばした双子がキャンティを挟むように抱きついた。
「「お帰りキティ」」
「僕達待ってたんだよ?」
「塔の話聞かせて、キティ!」
「ただいまレッ君、チーちゃん。話す事いっぱいあるから、お家帰ったら話すね」
シャム猫風レフェシアンの双子、クラレットとチナールは口を開くと交互にキャンティに話しかける。
ニッコリキャンティが答えた時、突き飛ばされたシュンセツがむくっと起きあがって抗議した。
「ちょっとー、何するのよ!」
「キティを独り占めしてたシュンがいけないんだよ」
「そうそう。全然離れないんだもん。ズルいよ」
「早い者勝ちよ!」
双子の反撃を一言で斬り捨てたシュンセツはバッと正面からキャンティに抱きついた。
わいわいと双子とシュンセツが言い合いしていると、
「再会を喜ぶのは良いけど、皆でキティをつぶすつもり?」
苦笑まじりに言ったのは、健康に日焼けした黒猫レフェシアンの少年だった。
彼の言う通り、姉弟達に飛び付かれて埋もれかけていたキャンティは窒息寸前だった。
「お帰り、キティ」
「ただいま、キル君」
開放されて大きく深呼吸するキャンティに微笑みかけた少年、弟のキルシュに、キャンティはニッコリ微笑んで答えた。
「こう?」
「そうそう、そんな感じで火加減に気を付けるのよ」
「はーい」
翌日、キャンティは朝から母親と台所に立って料理をしていた。
祖母の墓参りに行く準備で、大忙しの母が帰省したばかりのキャンティもかり出したのだった。
「ママー。ごめん、やっぱりいびつになったー」
「……シュンはホントに手先が不器用なのね、いいわ。キティ、変わりにやって上げて頂戴」
「はいはーい」
母の言葉に、キャンティは二つ返事で野菜を切っていたシュンセツから包丁を譲り受けた。
「学校でもご飯はちゃんと食べてるの、キティ?」
「うん、食堂面白いんだ~、いろんな人が居るし、いろんなモノがあるし!」
ニコニコと学園の話しをするキャンティに、シュンセツもニコニコしながら耳を傾けた。
昨日帰郷してから、姉弟達は暇さえあればキャンティに塔の生活を聞いては魔法の事について質問していた。
村の周辺にはには魔法使いがほとんど居らず、キャンティは久々の入学資格者だった。
「キティ、お鍋の様子見なくて良いの?」
「あ!」
泡立て器で卵を混ぜていたチナールの言葉に、キャンティは慌ててことこと煮込んでいた鍋を見に戻る。
料理下手なシュンセツはその後について鍋の中を覗き込んで歓声を上げた。
「桃のコンポート! 美味しそうだけど、こんなに食べるの?」
「お友達のお土産にしようと思って、一杯作ったんだー! これなら長持ちするもんね」
「なるほどねー。お友達喜んで貰えると良いわね」
キャンティの答えに、シュンセツはニッコリ微笑んで妹の頭を撫でた。
ごろごろ~、と喉を鳴らしたキャンティもニッコリ微笑んで頷く。
「キティー、卵焼き作るの手伝ってー」
「うん、分かったー」
楽しそうなキャンティとシュンセツを見てむっと羨ましそうな顔をしたチナールがかき混ぜていた卵を持ち上げて呼びつけた。
二つ返事で答えたキャンティに、シュンセツもまたとことこ付いてくる。
「シュンは邪魔になるからレット達を手伝ってきたら?」
「そうはいかないわよ。慰霊参りの料理は女、灯籠は男の仕事ってしきたりじゃない」
「それだけ料理がへたなら、いっそシュンは男になって灯籠作りした方が良いのよ」
「うわ、チナひっどい!」
さらりとチナールが毒づくのに、シュンセツは苦笑しながらも慣れっこで軽口を叩く。
姉妹達のやりとりに、キャンティはクスッと笑いながら家に帰ってきたという事を実感していた。
村の側にある丘を登った所に、その村の墓地があった。
準備をした明くる日、日当たりの良い丘の上に並ぶ石碑の一つを前にキャンティ達一家は集まっていた。
父親がろうそくを持って一家の祖母が眠る墓の前に立った。
「火の精霊に仕えし我が先祖よ、今年もその瞬きに守られ、その力に養われた子孫が集った。これからも我らを見守り、育む火を灯してくれ」
祈りを捧げた父親は、ろうそくの火を家族が持った灯籠に一つ一つうつしていく。
灯籠の全てに火を灯した父親はろうそくを石碑の穴に差し込んでニッコリと家族を振り返る。
「さぁ、飯だ!」
『わーい!!』
儀式の終わりに、姉弟達は歓声を上げて料理に群がった。
「それにしても、この暑いのに火を使うのは辛いわね……」
「お祖母ちゃんは火の月に生まれたんだからしょうがないだろ。姉さんはしたないよ」
ぱたぱたと服をつまんで扇ぐシュンセツに、キルシュが顔を顰めてたしなめた。
キャンティはせっせと料理を食べながらニッコリシュンセツに声を掛ける。
「お姉ちゃん、コンポート食べようよ。冷たくて美味しいよ」
「そうするわー!」
キャンティのすすめにニッコリ微笑んだシュンセツは氷の入った桃のコンポートに箸をのばす。
「キティ、今日塔に帰っちゃうの?」
「もうちょっと家でゆっくりしていったら?」
「けど、授業もあるし、やっぱり行かなくちゃ。また今度帰ってくるよ」
双子が交互に行った言葉に、キャンティは苦笑して二人の頭を撫でた。
憮然としながらも双子はそれ以上何も言えずに引き下がった。
「塔と言えば、お義母さんも行ってたのよね?」
「そうらしいなぁ」
「お祖母ちゃんは攻撃魔法科で攻撃魔法習ってたんだよ。けど、戦いに使うのは嫌だなって思ったからあとで後悔したんだって」
「そう言えばそうだったな……キティはお祖母ちゃんと仲良しだったもんなぁ」
両親の言葉に、キャンティがすぐさま反応した。
その答えに、父親はニッコリ微笑んでキャンティの頭を撫でた。
撫でられてニコニコしているキティにシュンセツが尋ねる。
「キティは魔法史研究科だっけ?」
「そうだよ。今は召喚魔法の勉強中ー」
「そっか、頑張ってね」
キャンティの答えにシュンセツは父の後に続いてキャンティの頭を撫でて微笑んだ。
墓参りから戻ったキャンティは荷物をまとめると家族に別れを告げて家をあとにした。
門をくぐって到着した丘へ戻る前に、彼女は祖母の墓に立ち寄った。
あたりはすっかり暗くなり、一番星がまたたき始めている。
墓の前に佇んだキャンティは黙って石碑の前に立ち、微笑みを浮かべて石碑を見つめていた。
その瞳には何が映ってるわけでもなく、尻尾は力無く後ろにたれていた。
「やっぱりいた、キティ」
かけられた声にキャンティが驚いて振り返ると、キルシュが少し不機嫌そうな顔で立っていた。
ばつが悪そうに笑うキャンティを睨んで、キルシュは石碑に手をかける。
「きっとお祖母ちゃんは怒ってないよ、キティ。だからキティはキティの思った通りにすればいい」
「うん、わかってる。お祖母ちゃんは優しいからね」
キルシュの言葉に、キャンティは微笑んだままそっと石碑に手を伸ばした。
しかしそれは石碑に触れる前で、躊躇うように引き戻された。
「またお祖母ちゃんを連れてくるよ」
「キティ!」
微笑んだまま踵を返したキャンティを、キルシュが呼び止めた。
「もう一回ちゃんと陽炎送りをしよう。そうすれば、お祖母ちゃんはちゃんと……」
「だめだよ、キル君。未だ僕はお祖母ちゃんと離れたくないんだ」
キルシュの言葉に振り返ったキャンティはゆるゆると首を振った。
虚ろな瞳でゆるりと微笑むキャンティに、キルシュはギリッと唇をかみしめながら呟く。
「けど、そうしなきゃキティはちゃんと笑えないじゃないか……」
「そんなことないよ。キル君達家族と居ると楽しくて嬉しいし。それに、学校も凄く楽しいよ。いろんな人が居てみんな優しくて。無理に笑ってる事なんてほとんど無い」
キルシュの言葉に、キャンティはニッコリと微笑んだ。
その微笑みは暖かく、嘘が混じっている様子は見えなかった。
驚いているキルシュに、キャンティはニコニコと続ける。
「だから、大丈夫だよ。行ってくるね」
ニッコリと微笑んで手を振ったキャンティは、今度こそ踵を返した。
その後ろ姿を、茫然と見送るキルシュの後ろに、スッと近付く影があった。
「いい顔してたわねー、キティ」
「!? 姉さんっ?!」
尻尾を揺らしながら現れた彼女に、キルシュは飛び上がらんばかりに驚いて振り返った。
そんなキルシュをニヤリと微笑んで見あげたシュンセツは口を開いた。
「玉砕したわねー。キルシュ」
「何がっ!」
「とぼけたってダメよー。いくらキティが可愛くったって、お姉ちゃん口説いちゃダメでしょ」
「だから何がーっ!!」
真っ赤になって否定するキルシュを、シュンセツはクスクス笑ってからかいながらキャンティが去っていった方を見た。
そこにもう可愛い妹の姿は無くとも、先ほどのぞき見た微笑みは目に焼き付いていた。
「あの子こっちの学校はほとんど行かなかったからちょっと心配だったんだけど、楽しそうで安心したわ」
「本当のこと言ってると思う?」
微笑むシュンセツにキルシュは尋ねた。
その問いに、シュンセツはキョトンとしてからニヤッと笑う。
「自分が出来なかった事を他の人が出来ちゃって悔しいのは分かるけどね、さっきの笑顔は本物よ。キティ、学園では上手くやってる見たい」
「そっか」
ニッコリ微笑むシュンセツの言葉に、キルシュもやっと安堵した表情を見せて小さい姉が姿を消した闇を見つめた。
キラリと夜空に流れ星が瞬いた。