戯言繰言空言
紅炎のソレンティアのプレイ日記です。多分。 SNGのお知り合いはリンクアンリンクフリーです。
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帰宅中の電車の中でふと降りてきたのでそこから一気に携帯で打ちました。
短編と言うよりショートショートかも知れません……?
それほどグロテスクな表現はありませんが苦手な方はご注意下さいませ。
平日の公園で、一人の男がベンチに腰を下ろしていた。
数日前にリストラされた彼はまだ家族にその事を告げられず、公園で悶々と時間を潰していた。
スズメの涙ほどの退職金では職を探しながら家族を養うこともままならない。
ついこの間までは人事だったその事態と向き合うことが出来ず、ただ無意味に時間だけが流れていく。
「いっそ死んだ方が楽かもなぁ」
空を眺めながら自嘲したその時だった。
「なんだって?」
かけられた声にふりかえると派手に髪を染めた青年がキラキラと真っ直ぐな瞳を輝かせて立っていた。
男は他人と話す余裕はなく、ふっと目をそらせて青年を無視した。
「あんた、死にたいのか?」
「おまえには関係ないだろ」
「あぁ、オレには無いね。けど、あんたにはあるだろ」
不躾に尋ねてきた青年に男はぶっきらぼうに答える。
しかし、そんな様子を気にも止めない様子でニッと笑った青年はツカツカと歩み寄って男の正面に立つ。
当たり前のことを言いながら、睨み付ける自分に臆することなく正面に立つ青年がニコニコと愛想のいい笑顔を浮かべているのに、男は何故かゾッと背筋が寒くなった。
「そんなに死にたいなら殺してやるよ」
「え?」
ニコニコと微笑んだまま、青年が突き出したナイフを、きょとんと目を見張った男はわずかにのけ反るようにかわした。
それは、本能的な直感と偶然が引き起こした奇跡。
ナイフが掠めた首筋にジワリと血が滲んだのを、男は知らない。知るよしもない。
ただ、恐怖と混乱がじわじわ男を蝕んでいく。
「お、かわしたな。久々に手応えある相手に遇えた」
ナイフをかわされて、しかしあせる様子もなく先ほどと変わらない笑顔を浮かべる青年に、男はただ本能に従って逃げ出した!!
―――死にたくない。死にたくない、死にたくない!!
「久々に俺の得物で仕留めてやるよ。大丈夫、苦しくはないさ」
転がるように逃げ出した男に優しい声で言った青年は下げていたショルダーバックから大きな錨らしい物を取り出した。
青年の腕ほどの太いシャンクに、爪は外側に鋭く尖り、とぎすました刃物を思わせる。
唯一、錨と大きく異なっていたのはシャンクの先端部分、爪の中央に鋭い槍のような刃がつき出していた。
ニィっと笑って青年は呟いた。
「ちゃちゃっと零崎始めんぞ」
ブンッと野太い鎖を回すと、槍の如く飛んで行った錨の先端部が走る男の頭部を跡形なく打ち砕いた。
男の脳裏に、遺して逝く家族をよぎらせる時間も与えなかった。